税金:不動産所得・減価償却・損益通算の仕組み
更新:2026年10月30日(税制は令和8年4月1日現在の法令等で確認)|Veliq Living 編集部
- 不動産所得は、家賃などの総収入金額から必要経費を引いて計算します。建物は減価償却で毎年少しずつ必要経費にします。土地は減価償却しません。
- 不動産所得の赤字は給与所得などと損益通算できますが、土地を取得するための借入金の利子に当たる部分は対象外です。
- 給与を1か所から受ける会社員は、給与以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要です。
不動産所得の計算
- 総収入金額に入るもの:家賃のほか、名義書換料・承諾料・更新料・頭金、返還を要しない敷金や保証金、共益費の名目で受け取る電気代・水道代・掃除代など(国税庁 No.1370)。
- 必要経費の例:固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費。不動産収入を得るために直接必要で、家事上の経費と明確に区分できるものに限られます(同)。借入金の利子も必要経費に入れます(確定申告の手引きは、不動産所得が赤字で「土地等を取得するために要した負債の利子の額」を必要経費に算入した場合の書き方を案内しています)(国税庁 確定申告の手引き)。
減価償却
- 建物・建物附属設備などは減価償却資産です。土地は時の経過で価値が減らないため対象になりません(国税庁 No.2100)。
- 平成10年4月1日以後に取得した建物は旧定額法または定額法、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備と構築物は定額法で償却します(同)。
- 定額法の償却率は、耐用年数22年で0.046、27年で0.038、34年で0.030、47年で0.022です(平成19年4月1日以後に取得したもの)(国税庁 償却率表)。住宅用の鉄筋コンクリート造の耐用年数は47年、木造は22年です(国税庁 耐用年数表)。
減価償却費は現金の支出を伴いません。売るときは、建物の取得費から所有期間中の減価償却費の合計を差し引きます(国税庁 No.3261)(売るとき:譲渡所得税)。
計算例:1年目の不動産所得と手残り
1月に新築で取得したと仮定します(物件価格2,000万円のうち建物1,200万円・土地800万円、鉄筋コンクリート造)。借入1,000万円・金利2.0%・35年、家賃月9万円で空室1か月。運営経費31.39万円は計算を簡単にするため全額を必要経費として扱います。個々の費用が必要経費になるかは国税庁の資料や税務署で確かめてください。数字はすべて仮定です。
| 項目 | 税金の計算(不動産所得) | 現金の動き(手残り) |
|---|---|---|
| 家賃収入(11か月分) | 99.00万円 | 99.00万円 |
| 運営経費 | −31.39万円 | −31.39万円 |
| 借入金の利子(1年目) | −19.82万円 | — |
| 借入の返済(利子と元本) | — | −39.75万円 |
| 減価償却費(1,200万円 × 0.022) | −26.40万円 | — |
| 合計 | 21.39万円 | 27.86万円 |
二つの差6.47万円は、減価償却費26.40万円と、返済のうち元本の部分19.93万円の差です。
損益通算
損益通算できるのは、不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得の損失です(国税庁 No.2250)。ただし、不動産所得の損失のうち、土地(土地の上に存する権利を含む)を取得するために要した負債の利子に相当する部分の金額は損益通算できません(同)。土地・建物の譲渡による損失も、マイホームの特例を除き、他の所得と損益通算できません(国税庁 暮らしの税情報)。
計算例:同じ物件を借入2,000万円・金利3.0%・35年で買うと、1年目の利子は59.55万円、不動産所得は−18.34万円になります。利子を土地と建物の価格の比率(土地4割)で分けたと仮定すると、土地の取得に当たる利子は23.82万円です。赤字18.34万円はこれより小さいため、給与所得と損益通算できる金額は0円になります。利子の分け方は計算を簡単にするための仮定で、実際の扱いは税務署や税理士に確認してください。
事業的規模かどうか
建物の貸付けは、貸間・アパートなどで独立した室数がおおむね10室以上、独立家屋でおおむね5棟以上であれば、原則として事業として行われているものとして扱われます(国税庁 No.1373)。事業的規模かどうかで、次の扱いが変わります(同)。
- 賃貸用の資産の取壊しや除却などの損失:事業的規模なら全額を必要経費にできます。それ以外は、その損失を引く前の不動産所得の金額が限度です。
- 家賃の回収不能(貸倒れ):事業的規模なら回収不能になった年の必要経費。それ以外は、収入に計上した年にさかのぼって所得を計算し直します。
- 青色事業専従者給与・事業専従者控除:事業的規模の場合だけ適用されます。
- 青色申告特別控除(令和8年分まで):事業的規模で正規の簿記の原則による記帳などの要件を満たせば最高55万円、電子帳簿保存またはe-Taxによる申告を行えば65万円。それ以外は最高10万円です。
確定申告が必要になる条件
給与を1か所から受け、その全額が源泉徴収の対象になっている人は、給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円を超えると確定申告が必要です(国税庁 No.1900)。不動産所得はこの「給与所得・退職所得以外の所得」に入ります。
このページで扱っていないこと
住民税の計算、不動産取得税、消費税、相続税・贈与税、法人での保有は扱っていません。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 確定申告の手引き「手順2 収入金額等、所得金額を計算する」(不動産所得)
- 国税庁 タックスアンサー No.2100 減価償却のあらまし(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」(No.2100 の別表)
- 国税庁 個人課税課情報 第4号(平成19年4月12日)「減価償却資産の償却率表」
- 国税庁 タックスアンサー No.3261 建物の取得費の計算(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.2250 損益通算(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁「暮らしの税情報」(令和8年度版)土地や建物を売ったとき
- 国税庁 タックスアンサー No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人(令和8年4月1日現在法令等)
計算例の数字はすべて仮定で、特定の物件・商品を示すものではありません。本ページは一般的な情報提供を目的としており、投資の勧誘や個別の助言ではありません。税金の扱いは個別の事情で変わるため、税務署や税理士に確認してください。